怪獣と鯉のぼり

2017年04月30日 01:19

 

幼稚園で鯉のぼりを作った

塗り絵の小さな鯉のぼり

 

わくわくしながら

クレヨンで目を塗り始めたとたん

線からピッってはみ出した

 

いきなりの大失敗

 

アタシは鯉のぼりをグシャグシャに丸め

ぎゅっと拳を握ってわんわん泣いた

 

先生が飛んできて

塊になった鯉のぼりのしわを伸ばして

ひと周り大きな目に塗り直してくれた

 

どれほど先生がなだめても

泣きじゃくるアタシは

この日、二度とクレヨンを手にしなかった

 

 

鯉のぼりに夢中になっている園児を

ひとりひとり先生が手を引いてどこかへ連れて行く

泣き疲れて落ち着いた頃

アタシはこの異変に気づき始める

 

予防接種だった

 

真実を知ったアタシは

再び火が付いたように泣き出した

先生と綱引き状態を繰り返すも

抵抗むなしく引きずられて行き

白衣の大人を見た瞬間

手が付けられないほど

泣きわめき暴れまくった

 

アタシは・・・怪獣と化した

 

母が迎えに来るまで泣いて

母にしがみついてまた泣いた

 

忘れられない一日になった

 

 

小さな怪獣は

自分の失敗が悔しくて悲しくて

こころが受け止めきれなくて

わくわくを一瞬で台無しにした自分を

どうしても許せなかった

 

初めての挫折だったのかもしれない

 

 

この日を境に

アタシは幼稚園で泣かなくなった

 

 

カラフルな衣装をまとい

風の中を泳ぐはずの哀れな鯉のぼりは

タマに噛みちぎられるという

さらに過酷な運命をたどる

 

 

失敗から何かを学ぶ

 

大切なことを教えるために

犠牲になった鯉のぼりを

忘れることはないだろう  

 

 

 

THE END

 

 

 

 

青空をゆうゆうと泳ぐ鯉のぼり 気持ち良さそう~!

 

 

 

 

キャリアコンサルタント 大塚 恵久

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